気楽にブログ

独りと犬1、猫1で暮らしている中で気づいたことや考えたこと、使ってみたものなどを紹介してます

シェパードと紀州犬

犬は、仲間の死をどう感じるのか

 

一時、シェパードと紀州犬が我が家に同居していた時期があった。

シェパードは、たまたまあるブリーダーを訪れた際に、生後3か月ほどの子犬を見せられて即決してしまった。その時が、お金を出して犬を手に入れた初めての経験だった。

やがてシェパードが老犬の域に入ったぐらいに、知人から紀州犬を飼うことをお願いされて、九州のブリーダーから紀州犬を航空搬送してもらった。

生後2か月にも満たない子犬が、飛行機を乗り継いで我が家に来たのは、夏の終り頃だったと思う。

子犬の魅力は絶大だった。当時の同居人は、犬が2頭になることに最後まで反対していたが、帰宅して子犬を一目見たとたんに歓声を上げて、それ以降反対のㇵの時も口に出さなくなった。

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我が家に来た直後

それからシェパードが亡くなるまで、2,3年だろうか、この洋犬と和犬の代表格のような2頭の同居生活が続いた。双方ともメスである。

最初は子犬をなめたりしていたシェパードだったが、少し成長するとすぐに持て余し始めた。四六時中小さな体でシェパードに立ち向かって行く、遊ぼう攻撃に耐えられなくなっていったのだ。端で見ていても、この執拗な攻撃によくも耐えているもんだなぁ、とは思っていた。

ある時、今までにないような紀州犬の悲鳴を聞いたため、様子を見にいくと、前脚の片方を中途半端な「お手」のように持ち上げ、ヒンヒンと鳴いている。前足の脛に大きな深い裂傷ができており、筋肉まで裂けているのがすぐにわかった。

後にも先にも、この犬がこんな悲鳴と悲しげな声で鳴いたことは2度となかった。そしてこの事件以降は、紀州犬の方がシェパードに遠慮するようになった。シェパードの方がよっぽど我慢しきれなくなって噛んだのだろう。

その後しばらくすると紀州犬の方も落ち着いてきて、2頭一緒に散歩したり、一緒に車で移動して山の中を走り回ったり、寒い時などは家の中で2頭で寄り添って寝たり、そこにさらにネコが被さったりしていた。そんな光景を見てしまうと、酔っぱらった私もグラス片手に彼らに混じってしまうのだった。まだ若い方が遊びたがったり、老犬の方がちょっと迷惑そうだったりもしていたが、おおむね平和な日々が続いた。

やがて老犬と若い盛りの犬とで、散歩のペースがどうしても合わなくなって、2頭別々に散歩をするようになり、間もなく散歩もままならなくなっていった。

最後は腰が立たなくなり、寝たきり状態で死んでしまったのだが、埋葬までの間、死体を2日間ほど自宅に安置していた。

その間に紀州犬の方は、何回か死体の匂いを嗅ぎに近づいた。匂いを嗅ぐたびに、それまで見たこともないようなとても神妙な表情をして、全ての動作がとてもゆっくりになる。やがて慎重に後ずさるのだが、何回目かで近づくこと自体を止めてしまった。

知人がお悔やみに訪れて、死体の前に座り込むと、その人の背中からはじゃれつくのだが、決して死体には近づこうとはしなかった。

埋葬してしまった後も、数か月の間はシェパードの名前を出すと、まるでどこかから現れるとでも言うかのように、周りをきょろきょろと見まわして探していたが、半年もたつとその名前には反応しなくなっていった。

犬は、同族や仲間の死を、本能的に感じているのだと思う。そして、人間が受けた悲しみが時間と共に思い出に変わっていくように、その時に感じた本能的な感覚も徐々に薄らいでゆくのだろう。

 

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風呂の入口で私が出てくるのを待っている2頭